妊娠後期

この頃、女の子が欲しいパパはお腹に向かって「はるかちゃん」と呼びかけていた。

でも性別がわかるらしい検診日、

「男だね」

という先生の一言で、パパの顔は引き攣っていた。

帰り道でも口数が少ない。

後ろから見ても肩が脱力している感じで、本当に女の子が欲しかったんだなぁと

思ってしまった。

その日から男の子の名前を考えた。

今風でなくてもいいからカッコイイ名前にしたい。

それは本当にひらめきだった。

“里見八犬伝の8つの漢字を組み合わせたらどうだろう?”

8つの文字の音読み・訓読みを紙に書いて、嫌いな字を消していく。

残ったのは3つくらいだった。

その中で名前らしい組み合わせを作ったら、‘智礼(ともひろ)’という名前が

できた。

どうして八犬伝なのかと聞かれても答えられないけれど、漢字の意味としては

素敵だと思う。

名前に負けず、礼を重んじて賢い人になってほしい。

この年の一月は大雪が降った。

検診や母親学級の行事があって出掛ける妊婦には歩道にどけられた雪が邪魔で、

朝に路面が凍結しているのも怖かった。

病院で「この雪の中、よく来ましたね」なんて言われてしまった。

市の開催する母親学級に参加して近所にお友達ができた。

帰り道、8人くらいの妊婦の集団は自分でも怖いと思った。

妊娠・出産の為に会社を辞めたりする人の共通の悩みは、

「近くに住んでいる、友達が欲しい」

会社を辞めると働いている人との生活時間が合わなくなる。

それも身重のために行動範囲も行動時間も限られてくるし。

子供が産まれるともっと大変になると思うと、やっぱり同じ境遇の仲間が

いたほうが心強い。

この時の友達とは今でも時々遊ぶ。

参加して良かった。

2月に入って両親学級が開催された。

パパがこういう行事に積極的な人でよかったとつくづく思った。

内容は胎内の赤ちゃんが外からの音をどれだけ聞いているか、というNHKのビデオを

観て、ちゃんと聞いているからたくさん話し掛けて下さいね、ということと、

赤ちゃん(人形)を沐浴させる実習だった。

他の市や病院だと、お腹に5キロくらいの重さの器具をつけて妊婦体験をする所もあるとか。

赤ちゃんのことを知ってもらうのも大切だけど、妊婦のことも知ってもらうのは

もっと大切だから、パパにもいつか体験して欲しいなぁ。

 

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